今日はホーチミンにある統一会堂(英語でIndependence PalaceまたはReunification Palace。ベトナム語でDinh Độc Lập)に行ってきました。統一会堂はホーチミンの観光地としてもっとも有名な場所です。
1975年4月30日のベトナム戦争終結時に、北ベトナム軍の戦車が当時の南ベトナム(ベトナム共和国)の大統領府であったこの統一会堂のフェンスを破り突入、南ベトナムの首都サイゴンが陥落したという話は有名ですよね。

私はホーチミンに住んで5年以上経つのですが、恥ずかしながら統一会堂の中に入ったことがありませんでした。ホーチミンの中心地にあり、あまりにも見慣れている建物なので、敢えて中に入ろうという気にならなかったのですが、最近ベトナムの歴史を学ぶ中で、一度は行っておかないとと思っていました。

まずはこちらのチケットオフィス兼お土産屋でチケットを購入します。2020年6月時点で大人一枚65,000ドンです。

チケットオフィスから独立会堂の間には円状の芝生と噴水があります。ベトナム戦争終結時に戦車が突入したフェンスは今も健在です。このフェンスあたりから見る統一会堂は全景が見えてとても美しいです。
統一会堂のフェンス ベトナム戦争終結時。引用:VNExpress
統一会堂の入り口と統一会堂の間には、2台の戦車と1台の戦闘機が展示されています。
統一会堂に展示されている戦車 ベトナム戦争終結時
引用:VNA/VNS Photo Quang Thành
戦車は390と843、いずれも1975年のベトナム戦争終結時に統一会堂のフェンスに突入した戦車と同形式だということです。当時の戦車はそれぞれ中国とソビエト連邦から持ち込まれたものだそうです。

戦闘機はF5E、1975年の4月8日にこれと同型の戦闘機がこの統一会堂を爆撃しました。

戦車、戦闘機を見てから、いよいよ統一会堂内部に入って行きます。こちらが統一会堂の玄関口です。ベトナム戦争の終結時には、この統一会堂の最上階から北ベトナムが旗を振り、戦勝を祝いました。
2020年6月現在、ベトナムへは新型コロナウイルスの影響で外国人観光客が入国することができませんので、観光客はほとんどいないのかなと思っていたのですが、多くのベトナム人観光客が訪れていました。ベトナムを南北に2分したこの戦争は、同じベトナム人であっても立場によって見方が違います。ここに来ている人たちがどういう立場なのか、想像しながら見ていました。

統一会堂は大きく地上階と地下に分けられます。地上階は絢爛豪華な応接室などが数多くあります。一方地下はベトナム戦争当時に使われていた無線機などが無造作に置かれており、要塞のような様相を呈しています。
まずは地上階を1階から4階まで閲覧します。数多くの応接室、会議室が内覧できます。非常に豪華絢爛です。今でもこれらの応接室や会議室は使用されることがあるということです。
内閣会議室 カンファレンスホール 大統領応接室 副大統領応接室 バンケットルーム 大統領応接室 台湾より贈呈されたカーペット 大統領執務室 大統領夫人の客間 ゲーム室 映画館 図書室
図書室にある本をよく見てみると、英語の本がたくさん並んでいます。南ベトナムはアメリカ政府に支持されており、当時の大統領Nguyễn Văn Thiệuもアメリカとフランスでの軍事教育を受けており、英語でのコミュニケーションが主流だったのではないかと創造されます。

南ベトナム大統領 Nguyễn Văn Thiệu
引用:Wikipedia南ベトナム大統領Nguyễn Văn Thiệuとアメリカ政府高官
引用:Wikipedia
最上階はダンスホールになっており、そこから出られる屋上にはヘリコプターが展示されています。このヘリコプターは大統領Nguyễn Văn Thiệuが使用したものと同型のUH-1(Huey)です。円形に赤くマークされている場所は、1975年4月8日に爆弾が落とされた場所です。

最上階から、一気に地下に降ります。地下は空爆に耐えられるような構造となっており、建物外に脱出するトンネルもあると言われています。ベトナム戦争当時は作戦司令室として利用されており、ベトナム国内の地図、電話、通信機器などが無造作に各部屋に置かれています。また、南部地域の臨時ラジオ放送などの拠点としても使用されていました。
私が行った時は、地上階にはたくさんの観光客がいたのですが、地下にはほとんど人がいませんでした。特に写真にある長く狭い無機質な廊下を一人で歩いていると、正直怖くな理、一刻も早くここから出たいという思いにかられましたが、せっかくなので頑張って最後まで閲覧を続けました。
地下部分は地上階と全く雰囲気が違い、戦時中の緊張感が今も伝わってきます。地上階はあくまでも外国との外交などの場面でのみ使われ、実際に機能していたのはこの地下部分なんだと思います。
大統領作戦司令室 大統領寝室(緊急用)
作戦司令室には手書きで当時の戦況を記載した地図が残っています。非常に生々しいですね。

1975年にベトナム戦争が終結してからまだ45年。当時北ベトナムとして、あるいは南ベトナムとして戦ったベトナムの人々は多くがまだ健在でしょう。彼らにとって、この場所はどういう風に映るののでしょう。もちろん部外者の自分には想像もつかないのですが、色々と思いを馳せていました。
私はベトナムに住んで7年以上、経営者として毎日ベトナム人と接していますが、普段の彼らからベトナム戦争について語られることや、ベトナム戦争の名残を感じることはほとんどありません。ただ、今でもこれだけ多くのベトナム人が統一会堂を訪れている様子を見ると、まだまだベトナム人にとってベトナム戦争は記憶に新しい出来事なんだなあと、改めて思います。
私はベトナム戦争を一つの立場に立って評価しようなどとは思いません。ただ、ベトナムに住み、ベトナム人と仕事をする立場上、ベトナム人への敬意として私はベトナムの歴史を正確に理解することは必要だと思っています。
ベトナムに旅行に来られる方、あるいはベトナムにお住いの方、機会があれば一度は訪れてほしい場所です。
ホーチミン統一会堂(独立宮殿):Independence Palace,Reunification Palace,Dinh Độc Lập
住所:135 Nam Ky Khoi Nghia Street, District 1, Ho Chi Minh City, Vietnam
開館時間:7:30 AM 11 AM, 1 PM – 4 PM